エロチャットアプリ

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都会の事務所から地方の工場に転勤になって半年。会社が土地代の安いところを探して辿り着いた場所なのか、本当に何もない田舎だった。あるのは大自然と言う名の未開発の荒れ地だけである。
しかし、半年もすると、その人工物が何もない田舎町に愛着がわいてきた。太陽ってこんなにまぶしいのか、夜ってこんなに暗いのか、と言う当たり前の発見がどんどんと心地よくなっていき、人間と言う生物もまた自然の一部なのだなと感じるようになってきた。そして、都会にいたセフレも連れてきてあげればよかったなと思い始めた。
僕たちは僕の転勤を機に別れた。いや、別れたは大げさだろう。もともとはエロチャットアプリを通じて知り合い、何度かオフパコをしていた仲だ。金銭が絡むような関係ではなくて僕たちは純粋にお互いの空白を埋めるだけの関係だった。
しかし、それ以上はなかった。会えるから会っていただけのことであり、僕が転勤になって会えなくなったら、そこで関係が終わっただけの話だ。僕もこちらの生活リズムになれるのが先決であり、エロチャットアプリも立ち上げなくなっていた。
だが、こうして田舎暮らしに慣れてくるとしきりに彼女のことを思い出すようになった。ごみごみした都会から広々とした田舎で、朝日のまぶしさに目覚め、夕暮れとともに眠る。そんな生活を彼女と二人で送りたいと考えるようになった。
今、彼女はどうしているだろう？と僕は久々に彼女との出会いのきっかけになったエロチャットアプリを立ち上げた。そして、そこに彼女はまだいた。僕は感慨深くなり、彼女に「久しぶり！」と声をかけた。再び、僕が都会に戻る日までエロチャットの関係に戻るのもいいだろう。
すると彼女はしばしの沈黙の後、こう返してきた。
「えーと・・・どちら様でしたっけ？」
僕は田舎で独りで暮らして行こう、と心に決めた。
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